トスカーナ滞在中に、イタリアの農家を訪ねる体験をしてきました。私は食糧農業機関に勤めているとはいえ農業にはまるっきり明るくないのでこの目でどんなところか見てみたかったのと、私の父が小さな庭で野菜などを育てているので興味があるかなと思ったのとで、このアクティビティを計画してみたのでした。ここはきっと見てないでしょうが、アレッツォにお住まいのUさんという日本人の方にお世話になってこの体験ができました。Uさんありがとうございました。
アグリツーリズモはイタリアでは、特にこのトスカーナ地方では非常に人気があって、どこどこの農家で乳搾りをしてきたよ、チーズを作ってもらってきたよ、オリーブオイルを作るのを見学したよ、というような話をイタリア人からも聞いたりするのですが、今回のは私たちは本当にお客さん。農家の中を見せてもらって、どんな動物がいるか、どんなことをやっているか、おうちのお料理の仕方や家族の考え方などなどを実際に見て聞いてきたのでした。手作りの豪快な農家ランチも出してくれてそれがとにかくとても美味しくて感動的でした。農家の奥さんに「ローマに住んでるの?家ではひとりでごはんたべるんでしょう?」と聞かれて、「そうです、いつもひとりです」と答え、その場にある大きなテーブルをぐるりととりかこんだ15個くらいの椅子を見ながら、ローマのおうちで毎日ひとりで夕食を食べている自分の姿が脳裏に浮かんで、不覚にも涙が出そうになってしまいました。確かに、人生の何か大事なことを毎日少しずつ失っている気がする。農家の奥さんはそんな意味で言ったんじゃないんでしょうけど。
写真は農家にいたかなりアクティブな子ぶたちゃん2匹。いつもじゃれあっていて、犬や猫とも仲良くてびっくりしました。当たり前なんですが、本当にしっぽが見事にくるりと巻いていて完璧だなぁと思って写真をとってみました。おしりをお見せしてしまってすみません。この日の前の日にちいさなちいさな赤ちゃんぶたが11匹産まれたとかで、その小さな赤ちゃんぶたを見てしまった私としては、突如としてぶたに愛情がわいてきてしまうのですが、農家としては重要な畜産物。ペットのようにかわいがることはまったくなく、クールに接していました。そういうことは何でもないことのようでいてものすごく大事なことなのかもしれません。
世の中にはいろいろな人や物や考え方があって、それは誰の目からみても同じではなくて見る場所や見るポイントを変えると全く反対に見えたりすることがあって、それを頭で「理解」することは誰にでもとても難しいことだけれど、それを「認識」することはわりと簡単にできるので、「ああ、いろいろな人がいるし、いろいろな考え方があるなぁ」と時々こうやって体当たりで認識させてもらえるのはとても幸運なことなんじゃないかと、ブタちゃんを見ながら思いました。楽しくもいろいろと考えさせられる体験でした。