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Vienna Staatsoper


8月に、10月のウィーン出張が入ると分かってから、どうしても一度は行きたかった国立歌劇場に行こうと思い立ってチケットを頑張って取ったのでフライトの疲れもなんのその、という気分で見に行ってまいりました。最新作のミッションインポッシブルでのあの息を飲むシーンとなった歌劇場です。映画ではトゥーランドットでしたが、私は同じプッチーニでも蝶々夫人でした。この際日程が合えばどのオペラでも良いというのが正直なところでしたが、結論から言うと、私は今、この年齢でこの時期にこうして改めて蝶々夫人を観ることができて本当に「助かった」と思いました。「良かった」というよりは「助かった」と思ったのです。

ところで、せっかくヨーロッパに住んでいるからという理由で、ミーハーな気分で私はオペラに行くことが多かったこともあって、観光客の皆さんがせっかくだからといってオペラに行くという選択をするのをとても応援します。ので、ちょっとしたコツを書いておきます。

まずオペラのチケットをゲットしたら会場の場所、開演時間、会場のオープン時間などを確認します。夜のオペラの場合は終了時刻が夜の12時を超すこともよくあります。ですので女性だけの場合はホテルの人に頼んで帰りのタクシーの予約をしておくのも良いかもしれません。カーテンコールまで会場にいると、タクシーを求める人の群れに埋もれて、下手をするとタクシー難民になります。女性だけで夜中に地下鉄に乗るのは自己責任で、というと簡単ですが、99%の確率で何も起こらず安全だとは思いますが、1%の確率をどう考えるか、というところです。私は最近は後ろ髪を引かれる思いで、幕が一度閉じたらカーテンコールは振り切って一足先に会場を出ます。するとタクシーはすぐに拾えます。

もう一つ大事なのは、もし英語の文章を読みなれていない方は、前日から前もって、観る予定のオペラのあらすじを1幕、2幕、3幕、とインターネットで探して日本語で頭に入れておくのも良いでしょう。プッチーニは全編イタリア語なので、あらすじが分かっていないと、だいたい置いていかれます。英文を読みなれている方はこれはサボっても大丈夫です。理由は下の方に書いておきます。

その日は観光を詰め込まず、お昼を食べたら午後はホテルやカフェなどでゆっくりと過ごすことをお勧めします。疲れすぎるとオペラは大音量の子守唄になりがちらしく、よく日本人の可愛らしいお嬢さんたちがコックリコックリとされているのを目にします。せっかく素敵な大人の夜を過ごすので(チケットもお安くはないですし)、前もってお昼寝をしておくのも良いかもしれません。会場付近には私は1時間半以上前に到着することにしています。なぜなら、場所を確認して、オペラハウスの外見を胸に焼き付け(写真にも)周りのお洒落なカフェの窓側に座って軽い夕食(サンドイッチなど)をあらかじめ済ませておき、そこに次第に集まってくるお洒落な人々を観察したいからです。この時間は割と至福の時間です。おすすめです。

そして45分から30分くらい前になったら会場に入ります。クロークにコートや大きな荷物を預け、身軽になります。クラッチのような小さなバッグを鞄に忍ばせておくのはいいかもしれません。結局小さなお財布と携帯、リップスティックなどしか必要ないのですから。ところで、ウィーン国立歌劇場のボックス席のチケットを持っている場合は、ボックス席のドアの後にちゃんと仕切りのある部屋があり、外套をかけておくための小部屋となっているのでクロークに行く必要はありません。大きなバッグなども多少のものであればそこに置くことができます。素敵な大きな鏡台もあってリップをお直しするのにも最適です。

席を確認したら、お化粧を再チェックして、お手洗いを済ませ、次はプログラムを手に入れましょう。廊下に案内役の男性、女性がきちんとした格好で立っているので彼らに聞いてみましょう。だいたい10ユーロ前後で買えます。ウィーンは3から5ユーロでお安いイメージでした。プログラムはオリジナル言語、つまりフランスだとフランス語、イタリアだとイタリア語、オーストリアだとドイツ語で書かれているので、買っても意味がないなあと思うかもしれませんが、プログラム自体がすごく素敵なので是非買ってください。そしてその中に必ず"A Lire a vant le spectacle"(フランス語で「観劇の前に読む」という意味)だったり、"Argomento"(イタリア語で「主題」「あらすじ」というような意味)だったり英語で"Synopsis"と書いてあったりするページがあって、そこには日本語訳がある時もあるし、英語訳は必ずあります。それをお勉強(予習)するのが正しいオペラ前の時間の過ごし方なのですね。もちろんこれはオペラに精通した方はされませんけれど。

プログラムを手に入れたら次にバーを探しに出かけます。オペラハウスにはだいたい素敵なバーが付いていて、大人の皆様がそこで社交活動をされています。やはり好きな方は通うのでばったり会うのですね。とても楽しそうです。シャンパンのような泡モノが人気ですが、私は観劇の前のアルコールは不安なので、だいたいトニックウォーターにレモンを入れてもらったりして、そういうすっきりしたドリンクをいただきつつ、プログラムを隅から隅まで眺めます(読みます、ではない)。そしてあらすじを再予習して時間になったらボックス席に入ります。上の写真はそのくらいの時間ですね。開いているのが縦長いプログラム。買うとだいたい、その日の歌手の皆さんの名前が書いてあるようなリーフレットももらえます。そして続々と集まってくるボックスの皆さんとご挨拶して、開いている英訳パネルを調節して、それからオペラの世界に入り込んでいく、という形です。

実は蝶々夫人はいろいろなところで観たのを入れると、私にとってちゃんとしたオペラハウスではこれが3回目です。他の演目よりなぜか多く観ているのですが、特に好きというわけでも嫌いというわけでもないというのが本心だったんですね。たまたまです。好きでもない、というのは、そもそも自分自身が長崎の東山手に住んでいたこともあって、「外国人から見た、素朴な長崎の人々と、芸者小屋の人々」という絵図が「さもありなん」で、コンセプトとしてチープなイメージがあるのは間違い無いんですね。わかりやすい例を出すと、現代の妻子ある日本人サラリーマンが、例えば仕事の関係で行った小さな途上国で入った飲み屋さんの可愛らしい女の子に声をかけて、それなりに仲良くなっちゃった、というのと何が違うんですか、という感じ。

ただおどろきなのはプッチーニが日本に行ったことが無いという事実でしょうか。それだけがただただすごいです。日本の民謡をちょこちょこと入れたり、アメリカ国家をうまく取り入れたり、まさに天才です。ストーリーとしては、時代背景と様々な状況で商売の女性に成った蝶々夫人は不幸なんだかそうじゃ無いんだかわからない部分で「これが私の人生」という半ば諦めの境地で没落士族であったら父のため、と生きているのですね。それを誰も責めることはできませんが、幼い15歳の女の子に本当の愛情なんて分かるわけがなく、あっさりとピンカートン氏を全て信じ切ってしまうんですが、そこを、いつも自分のことのように悔しく、憤ってしまいます。有名な「ある晴れた日に」が、まさにその信じ切っている感情そのものなのですが、いつもこの痛々しいアリアを聞きながら苦い気持ちになっていました。

ですが今回は初めて、渋い気持ちではなく、晴れた秋空のような気分ですっきりと「ある晴れた日に」を聞くことができました。今回初めて、遅まきながら、実は蝶々夫人は実はこの歌の時には全て知っていて、何もかもわかっていて、裏切られたことも全部、気づいた上で、ただ単に、ピンカートン氏を好きだという気持ちだけだったんじゃないかと、急に思いました。人生どうしようもないことはものすごくたくさんあります。自分の気持ちだって一番どうしようもないものでしょう。ずっと話をそのまま受け取っていて、騙された蝶々さんはバカな子だと思って憤っていたけれど、そういうことじゃないかもしれない、と思いました。騙されていなければ自分を見失ってしまいそうな状況だってあるかもしれない。気丈に生きるっていうことは強い(正しい)という意味だけじゃないかもしれない、と思いました。2008年のエドハリス主演映画の「アパルーサ」を見たときも、蝶々さんとは全く逆の意味ではありますが、確か少し似たようなことを考えたような気がします。

そしてこうして年齢を重ねてきて、世の中は公平ではなく、強い人がいて弱い人がいる、正義だけが勝つわけでもなく悪だけが勝つわけでもない、というのが人生を通してだんだん実感として自分の経験として自分の一部になってくるときに、「勝ち組」だとか「負け組」だとかそういうことの本質を考えずにきれいごとをいうことの無邪気な悪意や、「知らないこと」あるいは「よく分からないこと」という存在を無視して生きて行く容易さなどに流されがちになってくると思うんですね。時々胸が張り裂けそうに辛く悲しいことが起こって、人々の無関心さや冷たさ、温かさ、優しさなどに触れると「一見弱い人」が実は「強い人」であることが見えてくると思うんです。「一見強い人」が「弱い人」であったり。今、この現実世界で、それを時々思い出させてくれるものは少ないのですが、この蝶々夫人は私に強く「思い出して!」と言ってくれました。弱く、優しく、騙されやすく、そして美しく、儚い蝶々さんは、その後の息子のことを思うと、本当はとてつもなく強く、賢い人なのかもしれないのです。

最後にマリアカラスのUn bel di'(ある晴れた日に)の音源を見つけたので載せておきます。対訳もあってわかりやすいです。

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ウィーンより

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お部屋にあったおみや短い出張でウィーンに来ています。久しぶりのウィーンは、大雨。寒いし。今回は珍しくプライベートセクター(日本語がわからない民間部門、だそうです)の総会へのお呼ばれ出張で、3月に私がやった会議の結果などをお話するというものでした。いつもはどこかの国の政府の方と会議をしたり、どこかの国際組織と協力したり、というような仕事が多いのでこうして企業系の人々とお話するとその違いにハっとします。そしてホテルにチェックインしたら、お部屋には当たり前のように会社の試供品などがお土産としててんこもりに置いてあり、メッセージカードと共に、今回はプレゼンターなのでさらにこのおしゃれキャンドルまでどーんと置いてありました。すごいです。私はシヴィルサーヴァント(公務員)なのでこういうお土産のやりとりはかなり微妙なのですが、前回チェックしてみたところ、私の組織の場合だと、100ドル以上は基本的にもらってはダメで、はっきり断らなければいけないそうです。お土産文化の国だと申し訳ない気持になっちゃいますね。で、100ドル以下の場合は多数の同僚とシェアできるもの、オフィスで使えるものならおとがめなし(つまり完全に個人のものにしてしまわないならOK)ということだったので、食べ物系(試供品)はオフィスに帰ってからみんなに分けるようにするとして、キャンドルはオフィスで使うとちょっと迷惑そうな気がしないでもないですよねぇ。どうしよう。Jo Maloneって100ドル以上じゃないですよね?60ドルくらいだったような。でもオフィスメイトのCに聞いてみようと思います。それでオフィスでキャンドルを使うのはやっぱり迷惑ということになったら、あとは多分オフィスで引き出しの肥やしとなって終わるのかも。ああもったいない。でも気持がありがたいのでとりあえず持って帰ります。でもお土産は別としても、メッセージカードってやっぱり嬉しいものですね。ホテルの部屋に緊張しながら入った時にカードを見つけるとほっとするし嬉しくなります。

さて、会議は今日のうちに終了したのですが、明日は出席者の方とより身近にお話をするために、ソーシャルプログラムに参加してほしいということでした。土曜だし「いいよー」と簡単に請け負ったんですが、良くプログラムを見てみると、Schonbrunn Palaceに行って、Cafe ResidenzでランチをしてBelvedere CastleでKlimtのエキシビジョンを見るという、ありえないフル観光スケジュール。大雨予想なのに。ソーシャルプログラムが嬉しくないわけはないんですけど、出張のときって知り合いが一人もいない状態なのでちょっと心細いんですよね。やっぱり観光は自分が仕事モードじゃないときにやりたいな(心の声)。

追記(2014年5月19日):今日、ふらふらと毎日新聞を見ていたらこんな記事が:「ワールド・トレジャー:特派員が選ぶ私の世界遺産:シェーンブルン宮殿(オーストリア・ウィーン)」。なんだかセレンディピティ?

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オリエント急行にて

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前回もちょっと書きましたが、この時期に主人のAさんが来ていたのは、今年は職場のみんなが1ヶ月の夏期休暇をとる8月に働き通しだったので9月の終わりから10月のはじめの1週間と、10月の半ばの1週間と2回に分けて休暇をとることにしたからなんですね。それでAさんと二人でいろいろと計画を練った結果、かの有名なオリエント急行に乗って旅してみようということになりました。写真は車窓の雰囲気。

「本物」のオリエント急行は今年の年末で廃止になってしまうそうですが、いわゆるクリスティの小説に出てきたオリエント急行というのは今回私たちが利用したVenice Simplon Orient Expressなんですね。予約のときからすでにそうでしたが、ヴェネツィアの駅でのチェックイン、発車を待つまでのアペリティーボの手配、レストランカーでの食事(フレンチのフルコース)、コンパートメント内でいただくコンチネンタルの朝食、到着駅のブダペストの名産であるフォアグラを使いつつもオリエンタルな食材も入った非常にクリエイティブなモダンフレンチのランチなど、とにかく何から何から非常に至れり尽くせりで満足の旅となりました。

列車は1920年当時のモデルを使ってあってマホガニーの内装がぴかぴかに磨いてあり、座席もゴージャスかつ清潔でパーソナルスチュワードのサービスも細かいところまで行き届いているといった感じで非常に良い印象です。食事にはエシレのバターが出てきたのですが私がいつもエシレのバターに出会う度にかすかに感じていた不便:「バターをとりづらい」が専用の陶器の入れ物で解決されていて感激しました。やっぱり専用のものがあったんですね。これを使うだけでとてもエレガントにバターを使うことができます。この容器に他の利用法があるかどうか分からないところが問題かもしれませんが。

オリエント急行のシグニチャルートはイタリアはヴェネツィアからイギリスのロンドンだそうです。私たちがハンガリーのブダペストに行ったルートを同じように行き、2日間ブダペストに宿泊、また電車に戻ってオーストリアはウィーンを経由しスイスの田舎を通ってフランスはパリへ。さらにそこからドーバー海峡を渡ってイギリスに渡るそうです。私たちの目的地も実はロンドンだったのですが、日程的にAさんの休暇の予定と合わず、ブダペストから飛行機でロンドンまで行ったのでした。

寝台列車ってそれだけで心がわくわくするし、たったの1泊の車内でしたがすごく充実して様々な思い出ができました。オリエント急行ならではのブティックカーもあってお土産もいろいろと売っていました。私は500部限定のクリスティの本を思わず買ってしまいました。ちょっとクリーシェですが装丁が素敵なので我慢できなかったのです。アガサ本人のこの列車に乗った感想のエッセイの一部も載っていてファンとしては嬉しい限りです。はっきりいって彼女の本は全部持っていて実家にずらりと並んでいるのにまた買ってしまった、というかすかな罪悪感がなきにしもあらずですが、懐かしくてぱらぱらと読んでいたら、そういえば英語で読んだことはなかったことに気づきました。エルキュールはフランス語で「モナミ」といっていたのではなく「モンシュー(ル)」と言っていたのですね。また灰色の脳細胞とは良く訳したなぁと後で思いましたが直訳は灰色の心(ハートではなくマインド)。いろいろと味わい深いと思ってしまいました。ちなみにこのブティックカーでAさんは職場のみんなとブリッジをするのでカードを買ってましたがアールデコの1920年なデザインで私も欲しくなるほど素敵でした。しかも、カードある?と聞いたときには無くて残念に思っていたところ、あとで食事をしている席にわざわざブティックカー担当の人がやってきてくれて「最後のひとつが見つかりましたがいかがですか?」とわざわざ教えてくれたのでした。

停車駅のウィーンで異国の「鉄な方々(こちらこちらを参照)」たちを発見したり、ブダペストでも楽しい観光ができたりできて良い旅でした。Aさんありがとうね!

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音楽の都ウィーンにて

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週末プラス月曜日1日だけお休みをもらって、2泊3日のちょっと早めのクリスマス休暇を楽しんで来ました。一緒に 行ったのは友達のアンジェラ(イタリア人)で、共通の友達であるジュリア(彼女もイタリア人)が今ウィーンに住んでいる!ということでこのチャンスを逃すわけにはいかないということになって飛行機でピューっと飛んできたのでした。

しーかーも、アンジェラは現在ピレリというイタリアの大きな会社のローマ本社とミラノ支社の2つの部署を担当していて、アリタリア航空のフリクエントフライヤーなので、この航空券はアリタリアなのに激安で、かつ、税金部分はアンジェラが「クリスマスプレゼントよ!」と言い張って私のお金を受け取ってもらえなかったのでなんと無料の交通費となりました。ありがたいことです。

見たこともないほどに厚い雲の層を突き抜けて到着したウィーンの町は霧につつまれていて見るからに極寒でしたが、飛行機を降りてみると、果たしてやはり久しぶりに「骨の髄まで染み入る寒さ」というのを体験しました。先々週ダーエスサラームの空港で40度の蒸し風呂に入っていた身にはかなりこたえます。でもそんな寒さもなにもかも忘れてしまいたくなるのがウィーンの美しさ。いろんなヨーロッパの町にいきましたが、ウィーンの町並みというのは、いわゆる私を含め多くの日本人が「ヨーロッパの町並み」としてイメージしているものなんじゃないかと思います。高い細い並木のある道。コンパクトで小奇麗なダウンタウン。河に沿って立ち並ぶ白くてきれいな飾りが施してあるアパート群、などなど。

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